ポルトガルワインの歴史
ポルトガルワインの歴史は古く、紀元前5世紀にはフェニキア人によってブドウ栽培が始められました。8世紀から11世紀まではイスラムの支配により一時停滞しますが、キリスト教徒が領土を回復してから再びワイン造りが盛んになりました。12世紀にスペインから独立してからもワイン造りは行われ、伝統的な栽培法や醸造法をもとに近代的醸造技術を採り入れることによりポルトガル固有のワインを造りあげてきました。16世紀にはマデイラワイン、18世紀にはポートワインが登場し、これらはスペインのシェリーと並んで世界三大酒精強化ワインと呼ばれています。
また、ポルトガルは歴史的に日本との繋がりが深く、16世紀の半ばにヨーロッパから初めて日本に訪れたポルトガル人によって、キリスト教や鉄砲とともにワインが伝えられました。ポルトガルワインはポルトガル語で赤ワインを意味するTinto(ティント)から「珍陀(ちんた)の酒」と呼ばれ、戦国時代の武将も珍重したと言われています。
最近では、昭和の文豪、壇一雄氏(壇ふみ(女優)さんの父)が氏の姓と同じ発音のダンワインを愛飲されたことでも知られています。氏はポルトガルに1年4ヶ月間滞在し「火宅の人」を執筆されましたが、その間「赤、白のダンワインを何百本抜いたことか」と随筆に記述するなど、ダンワインへの特別な思い入れがあったことが伺われます。
注目のワイン産地、ポルトガル
「今、最も注目されるワイン産地」、ポルトガルワインをジャンシス・ロビンソン始め世界の著名なワインライター達はこう表現します。紀元前5世紀頃からワイン造りの歴史を誇るポルトガル。近世、ワイン産地を捜し求める英国人がこの地でポートやマデイラの酒精強化ワインを生み出し、1900年パリ万博ではダンワインが金賞を受賞、一躍ヨーロッパで注目されるようになりました。
しかしながら20世紀の中盤以降、サラザール独裁政権の下、半鎖国のような状態が続き、ポルトガルワインはそのほとんどが国内で消費されていたため、この時期、ポートワイン、マデイラワインや一部のワインを除きポルトガル産のワインは国際的な舞台からは遠ざかっていました。1974年の「カーネーション革命」の後、1986年のEC(現在のEU)加盟を果たし、ポルトガルワインの市場は国内からヨーロッパそして世界に拡大されました。EU新規加盟国ポルトガルの産業基盤を強固にするために、EUとしてポルトガルの産業振興へ数々の支援を実施。ここで最も期待されたのはワイン産業でした。
ポルトガルの生産者たちの目の前に最新のワイン製造技術と大きな市場が広がりました。EUの経済的支援もあり、ここからポルトガルのワイン造りは激変します。もとより有史以来の長いワイン造りの伝統を持ち、国土のほとんど全ての場所でブドウが栽培され、個性あふれるワインを生産しているポルトガルに最新の醸造技術を学んだ新世代の造り手達が、EUのバックアップもあり次々と革新的なワインを生み出すに至りました。この状況はワイン消費国にも知れるようになり、最初は安くて美味しいワインの生産国として知られ、2000年以降は世界の銘醸ワインに勝るとも劣らない素晴らしいワインを生み出す産地として著名な評論家に認められるようになりました。
今や世界のワイン愛好家が次はどんなワインが出てくるかと、最も注目されるワイン産地に位置づけられるようになりました。
酒精強化ワイン
ワイン発酵途中にスピリッツを添加しアルコール度数を高めたワインです。
果汁の発酵を途中で止めることで、ワイン中の残糖度を調整することができ、甘口から辛口まで造ることができます。又、アルコール度数が高くなることで、ワインそのものの保存性もよくなります。
通常ワインのアルコール度数は高くても14%ほどまでですが、酒精強化ワインは17度以上21度ぐらいまでのアルコール度数となります。
・世界三大酒精強化ワイン
ポートワイン、マデイラワイン、シェリー
このうち2つがポルトガルで造られており、ポルトガルは酒精強化ワインの宝庫です。
マデイラワイン
ポルトガル領マデイラ島で造られる酒精強化ワイン
発酵途中にぶどう由来の96度のスピリッツを添加し発酵を止めます。
酒精強化後、人工的なエストウファシステム、自然を利用したカンテイロシステムにて熱による酸化熟成をさせます。
黒ブドウ、白ブドウで造られますが、熱による酸化熟成をさせることで、色は全て褐色になります。
ポートワイン
ポルトに流れ込むドウロ川上流域で造られる酒精強化ワイン
発酵途中にぶどう由来の77度のスピリッツを添加し発酵をとめます。
酒精強化後、ドウロ川河口のオポルト港の対岸ヴィラノヴァデガイアの蔵で熟成されます。
赤白両方造られます。
ブドウの出来が良かった年にはヴィンテージポートとボトルに記載されたポートが造られます。
ポルトガルのワイン生産について
ブドウ栽培面積:24万8000ha(世界第8位)
栽培されているブドウ品種:約350種
ワイン生産量:約750万hl(世界第9位)
ワイン輸出量:世界第8位
1人当たりのワイン消費量:48L(ルクセンブルク、仏、伊に次世界第4位、日本(2.5L))
ポルトガルのワイン法
1756年、世界で最初にドウロ地区(ボートワイン用ブドウ生産地域)に世界で初の原産地呼称管理法を制定。
1986年以降はEUに加盟し、2009年よりEU全体の法改正により現在の分類となりました。
分類 | 認定エリア数 |
---|---|
DOP(原産地統制名ワイン) | 28地区 |
IGP(地理的生産地表示ワイン) | 14地域 |
Vihno ヴィーニョ(テーブルワイン) | 全域 |
■主要DOP ワイン生産地域
Vinho Verde ヴィーニョ・ヴェルデ(ミーニョ地方)
アヴェッソ種やローレイロ種から造られるフレッシュでフルーティな白が70%。「緑(若い)のワイン」の名前のとおり、フレッシュな酸が効いた弱発泡性ワイン。近年、アルバリーニョ種も造られるようになる。
Porto e Douro ポルト・エ・ドウロ(トラズ・オス・モンテス地方)
ポルトは世界最古の原産地呼称統制地区で世界遺産にも登録されています。ドウロは1982年にスティルワインの産地としても認定。酒精強化ワインのポートとスティルワイン(ドウロ)の比率は4:6。
Dão ダン (ダン地方)
ポルトガル最高峰セラ・ダ・エストレラ山脈から西に流れるダン川とモンテゴ川の流域に広がる葡萄産地。古くからポルトガルを代表するワイン産地。赤ワインが約80%を占めます。
Bairrada バイラーダ (ベイラス地方)
主にバガ種から造られる赤ワインが80%ですが、フレッシュな白や発泡酒(エシュプマンテ)でも有名です。
Alentejo アレンテージョ(アレンテージョ地方)
コルクとオリーブの一大産地。夏の暑さが厳しく少雨のため、濃密なワインが生まれます。世界品種の栽培も盛ん。
Madeira マデイラ (マデイラ諸島)
今や「大西洋の真珠」と呼ばれるリゾート地。三大酒精強化ワインのひとつである「マデイラ」の産地として歴史的に著名。
ポルトガルの主要ブドウ品種(◇:白ブドウ、◆:黒ブドウ)
◇アルヴァリーニョ Alvarinho
産地:ヴィーニョ・ヴェルデ
ポルトガル本土最北端、スペイン国境と接するミーニョ川流域のヴィーニョ・ヴェルデ地域で栽培される白ブドウ品種。現在、ポルトガルで最も注目される葡萄品種。一般的なヴィーニョ・ヴェルデと異なり、熟したフルーツの香味、リッチで厚みのある味わい、アルコール度数も高目で熟成も可能なワイン。
◇ローレイロ Loureiro
産地:ヴィーニョ・ヴェルデ
ヴィーニョ・ヴェルデ全域とスペイン北西部のガリシア地方リアス・バイシャスで、生産量が増加している良質な品種。薫り高く濃厚で適度な酸を持ち、その独特な芳香は「月桂樹の香り」と表現されます。
◇エンクルザード Encruzado
産地:ダン
ダン地方で最も一般的に栽培されている品種。収穫量は少ないが優れた白ワイン用品種として定評があり、酸味・果実味のバランスがよく薫り高いワインが造られています。
◇マリアゴメス Maria Gomes
(フェルナン・ピレス Fernão Pires)
産地:バイラーダ、リバテージョ 他
ポルトガルで最も多く栽培される白ワイン品種で、バイラーダではマリアゴメスと呼ばれています。特にリバテージョとバイラーダを中心にポルトガル全域で栽培され、比較的早期に成熟し、応用の効く品種です。フローラルな香りと穏やかな酸味で柑橘系の味わいを楽しめます。バイラーダでは、白ワインの他にスパークリング・ワイン造りにも使用されます。
◇ビカル Bical
産地:バイラーダ、ダン 他
主にバイラーダとダン地域で栽培され、早熟で豊かな酸が特徴。白ワイン、スパークリング・ワインのブレンド用として使用されることが多い品種です。
◇アリント Arinto
産地:リバテージョ、エストレマドゥラ 他
ポルトガル中南部を中心に栽培され、強い酸味が特徴。長期熟成により、素晴らしい芳香と柑橘類の風味を持った味わい深いワインとなるといわれています。
◇ヴェルデーリョ Verdelho
産地:マデイラ
マデイラのヴェルデーリョは、ポルトガル本土、アソーレス、イタリアが原産地とされている。辛口マデイラワインを造る葡萄のセルシアルより若干暖かな気候条件の畑で栽培されることが多く、房の大きさが小から中、実は縦方向に長楕円で、皮が丈夫。セルシアルよりも酸味の少ない中辛口タイプのワインが造られる。
◆トウリガナショナル Touriga Nacional
産地:ドウロ、ダン、バイラーダ、リバテージョ 他
ポルトガルを代表する黒ブドウ品種。ポートワイン用のブドウとしては最も重要な品種で、ポルトガル北部、特にドウロ地方(赤ワインとポートワイン)やダン地方(ダンの全ての赤ワインに少なくとも20%含まれなくてはならない)を中心に栽培されています。一本の樹から収穫できるブドウが少ないため、深い色のタンニンもしっかりした凝縮した味わいのワインになります。
◆バガ Baga
産地:バイラーダ、エストレマドゥラ 他
バイラーダ地方の赤ワインの90%を産する主要品種。厚い果皮が特徴で、濃い色合いで高いレベルのタンニンと酸をワインにもたらします。優れたものは、北イタリアのネッビオーロ種のイメージに近く、長期熟成によりピノ・ノワールに似た風合いを持つといわれています。
◆ティンタ・ロリス Tinta Roriz
(アラゴネス Aragonez)
産地:アレンテージョ、ドウロ、リバテージョ 他
スペインのテンプラニーリョと同じ品種で、ポルトガル南部ではアラゴネスと呼ばれています(近くアラゴネスに統一)。滑らかな果実味が特徴で、洗練されたしなやかな味わいを楽しむことができます。ドウロではスティルワインやポートにトウリガナショナルと共に用いられ、トウリガナショナルの濃厚でパワフルな味わいに、滑らかさと気品を与える役割を担っています。
◆ジャエン Jaen
産地:バイラーダ、ダン
スペインではハエンと呼ばれる、ダン地方の赤ワイン用主要品種。
◆トリンカデイラ Trincadeira
産地:リバテージョ、アレンテージョ、エストレマドゥラ 他
ポルトガル南部で広く栽培され、果実味豊かで、スパイシーで濃厚な味わいが特徴。
◆ティンタ・ネグラ Tinta Negra
産地:マデイラ
マデイラでは18世紀にティンタ・ネグラが導入された。丈夫な品種で、中くらいから小さい実をつけ、皮が大変薄い。導入当時から、島の環境に簡単に適応した。主に島の南部のフンシャル、カマラ・デ・ロボス、北部のサン・ヴィセンテで栽培されている。ティンタ・ネグラからは辛口、中辛口、中甘口、甘口のワインが造られ、総生産はマデイラワイン全体の80~85%を占める。
ポルトガルワインを購入するには
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- 株式会社岸本 http://www.wineportugal.jp/
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